政治学科

税を考えることは 政治を考えること。

法学部 政治学科 津田 久美子 講師

政治とは「共生のための人々の営み」と津田先生。その中で税は政府による極めて強制的な措置ですが、人と人が共生するための資金源としても不可欠です。津田先生の主な研究テーマは国を越えて飛び交うお金の流れ。国と国の間の経済格差を是正するためのグローバルな税のあり方について考えたり、国際的租税回避の問題を研究しています。

思考停止せずに考え抜く力を身につける。

——政治とは何でしょうか?

政治にはいろいろな定義がありますが、とても広く捉えれば、「共生のための人々の営み」ということができます。

大前提として、人はそれぞれ違う価値観や考えを持っています。考え方が違えば、どうしても衝突が起こります。他者と同じ時間・同じ空間の中で生きていくためには、歩み寄りや、なんらかの調整・手続きが必要です。自分とは違う誰かと共に生きるための仕組みづくり、これが政治という営みです。

——政治を「共生のための営み」と考えたら、政治を学ぶことで日常にも応用できそうな気がしてきました。

その通りです。学校のクラスやPTAで何かを決めるときに、もめることってありますよね。そのときに、できるだけ多くの人が納得し、合意できる方法を知っていれば問題解決に役立ちますよね。

また、日々の生活の中で「このルールっておかしくない?」と違和感を抱くこともあります。皆さんにはちょっとイメージしづらいかもしれませんが、私の場合は子育てに関する手続きだったり、保育園探しで「あれ?」と思うことがありました。そういうときに「まあ、そういうものかな。仕方ないな」とスルーしてしまわずに、問題意識を持って一歩踏み出し、役場なんかに問い合わせてみる。そうすると意外に事態が好転することもあります。

置かれた状況に対して思考停止せず、考え抜く力も政治学科での学びによって得られるはずです。

政治学科には、歴史、思想、理論、制度、統治のシステムやメカニズムなど、人類が共生のために積み重ねてきた英知を、いろんな切り口から考える科目が用意されています。どの切り口も面白いので、満遍なく視野を広げるのもいいし、ある切り口にこだわって考えるのもいいでしょう。それぞれの学びからきっと「目からウロコ」な出合いがあると思います。

国境を越えて税のあり方を考える。

——先生の研究テーマについて教えてください。

国を越えて飛び交うお金の流れ、特に税のグローバルな側面に興味があり、主に二つの研究テーマに取り組んでいます。

一つは、貧しい国・人々へのお金の流れについてです。世界にはお金が足りないせいで命を落とす子どもがいたり、政治的混乱に陥っている地域があります。これらの課題に対して、お金をたくさん持っている人から税の仕組みで徴収し、適切に再分配することで偏った富の格差を解消しようというアイデアが、2000年頃世界的なムーブメントになりました。ですが結局、各国の足並みがそろわず、ほぼ実現には至りませんでした。

国家と一体として考えられてきた税が、ひとたび国境を越える問題になると話は途端に難しくなってしまいます。国をまたいで共通の徴税・再分配のルールを定める「世界政府」もなければ、国を越えて徴税する「世界租税機構」もないからです。

国内で抱える問題や歴史的な背景が異なる国同士が、どうしたら国境を越える税の問題に取り組めるのか。私は、これらに関する税の構想やアイデアの歴史、国際機関などでの話し合いの経緯や結果を研究することで、国境を越える税の意義や課題を浮かび上がらせることを試みています。

国と国の間の富の格差がますます拡大し、固定化してきてしまっている現代にあっては、抜本的に考えていかなければならないテーマの一つです。

——グローバルに課税し、グローバルに再分配する仕組みが、今まさに世界で求められているということですね。もう一つの研究テーマは何ですか?

二つ目は、国から流れ出ていってしまうお金の流れ、特に国際的租税回避の問題です。

租税回避もまた悪影響を被るのは貧しい国々です。国際的租税回避の多くは途上国を巡って行われ、先進国企業がこれに加担するという構図ができあがっていました。

これを国際社会で話し合おうという試みはこれまで何度もなされてきましたが、そのたびに先進国の力で優先度を極めて低くされてきました。

ところが、先進国のパワーが相対的に落ちてきている今、これまで先進国主導だった税の考え方に異議を呈する動きが、ここ2~3年の間に出始めています。今後どうなるかは未知数ですが、グローバルサウスと呼ばれる国々の勢いによって税を巡る動きが大いに変わる可能性があるので、注視していく必要があります。

——改めて、税とは何でしょうか?

税は政府による極めて強制的な措置です。その一方で、共生のための資金源としても不可欠です。その意味では私たちの生き方に直結するものであり、「税を考えることは政治を考えること」と言っても言い過ぎではないぐらい重要なテーマです。

——税や経済の話が政治学のテーマになるとは想像もしていませんでした。

そうですよね。そういう意味で政治学は自由で幅の広い学問領域だと思います。

政治学に限らず大学での学びは、高校時代の授業から考えると信じられないぐらい自由です。内容そのものもそうだし、やるもやらないも自由。

自由であるがゆえに、反対に不安に思う人もいるかもしれません。

本学は規模は大きいけれど、ある意味コンパクトで、学生と教員の距離が近いという特徴があります。もし不安になることがあれば、教員なり、事務の方なり、気軽に相談してください。こういうやり方もあるよとアドバイスしたり、こういう先輩がいるよと紹介することもできます。ぜひ安心してこの環境に飛び込み、学ぶことを楽しんでもらえたらと思います。