司書の資格取得を目指す、図書館学課程の学び。
——大学の学びには、資料や情報を収集する図書館が欠かせませんが、先生はその図書館の活用について研究されているんですね。
私の専門は図書館情報学です。経済学の専門家ではありませんので、学生の皆さんに経済学の専門的な学びについてアドバイスすることはできません。しかし、大学の学びに図書館は欠かせない存在ですので、1年次のゼミでは図書館を利用した学びの方法についてお話ししています。本学には、図書館司書の資格を取得できる図書館学課程のカリキュラムが用意されているので、興味を持つ学生には、さらに学びを深めるお手伝いができます。

私が担当している「図書館概論」や「児童サービス論」も、図書館司書課程の科目です。「図書館概論」では、公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館、企業や研究機関に付属している図書館、刑務所にある図書館などの役割について、「児童サービス論」では子どもと本をつなぐ催しや企画の考え方、選書の仕方などを学びます。
子ども時代に、生涯の読書習慣を養うために。
——先生が研究している「図書館における児童サービス」について、具体的に教えてください。
図書館が提供する各種サービスの中でも、子どもを対象とした児童サービスは、生涯にわたる読書習慣を養う基礎となるために特に重要なものです。就学前の子どもを含む児童向けに多く提供されているのが、絵本の読み聞かせですが、その出発点が、赤ちゃんと保護者を対象に絵本を通して心の触れ合いをプレゼントするブックスタートの取り組みです。このような児童サービスは、各図書館や各国でさまざまな方法で実施されており、子どもの教育において重要な役割を果たしています。しかし、こうした図書館の取り組みについて、まとまった研究は少なく、より良い児童サービスとは何かを探究することに意義とやりがいを感じています。
——2026年には、札幌市にも「こども本の森 札幌・北大』が開館しますね。
今、国内では民間の知見による新たな図書館のカタチが生まれつつあります。この流れに大きく貢献しているのが、建築家・安藤忠雄氏による「こども本の森」プロジェクトです。2026年夏に、北海道大学構内に開館する予定の「こども本の森 札幌・北大」もそのプロジェクトの一つなんですよ。
小中学生を対象とする各地の「こども本の森」では本の貸し出しをしていません。ただ、本があふれる空間に身を置き、本を読むことを目的としています。厳選された本を落ち着いた環境の中で読むことには、デジタルデトックスとしての側面もあるのかもしれませんね。

——子ども向けの本と大人向けの本の大きな違いは何でしょう。
子どもの本は“ベストセラー”より“ロングセラー”といわれており、長い歴史の中で色褪せることなく読み継がれてきた本がたくさんあります。例えば、イギリスの『ピーターラビット™』シリーズは、初版から120年以上が経っていますし、日本の『いないいないばあ』(童心社)も、60年近く前に出版された絵本です。
また、子ども向けの絵本には、さまざまな分野にわたる本質的なエッセンスが凝縮されていますので、年齢を重ねて読み返すとまた違った見方ができるものです。しかし、作者が絵本という手法をとったからといって、すべてが子ども向けの作品というわけではありません。子どもを楽しませたり、元気づけたりするべき絵本が、死を扱うなど残酷な場合もあります。子ども時代は短いので、出合うべき時期に、出合うべき本とつながれるように。そんな視点も学生さんにお伝えしたいと思います。

大学時代にこそ、
紙の本に触れて作品と出合ってほしい。
——日本ならではの図書館の姿が生まれつつあるとお考えだそうですね。
賛否はありますが、2003年に公立図書館に指定管理者制度が導入されてからは、民間の知見を取り入れた新しい図書館、情報化社会・多文化共生社会実現のための図書館のように、限りがある予算の中でさまざまな工夫が凝らされるようになりました。海外では有料化されている図書館もある中で、日本では今も無料で貸し出しが行われています。ありがたい環境でもありますよね。先行き不透明な国際情勢や少子高齢化社会という背景の中で、日本の図書館はどのように変わるべきか、または変わらずにいるべきか、今後も考察を続けたいと思っています。
