政治学科

やる気の研究で 行政をアップデート。

法学部 政治学科 田井 浩人 講師

専門は行政学。公務員のモチベーション(やる気)について研究しています。私たちの暮らしを支える行政や政策の質は、法律や制度だけでなく、現場で働く人の意欲にも左右されます。田井先生は、心理学や経営学の知見も取り入れながら、公務員のやる気を引き出す組織マネジメントの方法を探っています。


行政の仕組みを知れば、世の中がクリアに見える。

——政治学科では何を学べるのでしょうか?

「政治って選挙とか国会のこと?」と思う人もいるかもしれません。もちろんそれも大切なテーマですが、政治学科で扱う分野にはもっと広がりがあります。歴史や思想、国際関係、行政、公共政策、メディアも政治学の対象です。
政治とは、人々がともに暮らす社会で「どうすればより良く生きられるか」を考え、そのためのルールや制度を作る営みです。正解のない問いに正面から向き合い、授業や友人との議論を通してじっくりと考える——そんな学びの楽しさを味わえるのが、政治学科の魅力です。

——田井先生の専門である行政学とは、どんな学問でしょうか?

行政学は、政府の仕組みや組織、政策を研究する分野です。例えば、国の内閣や省庁などの制度、組織の管理方法などを学びます。高校の政治・経済の授業に近いイメージです。大学ではさらに踏み込んで、実際の国や自治体の動きまで分析します。
公務員を目指す人にとっては、行政の基本的な仕組みや原理、動きを体系的に理解できるため、将来の仕事に大いに役立ちます。公務員志望でなくても、社会を動かす行政の在り方を知ることで、世の中の見え方が一段とクリアになるはずです。

——高校までの学習と、大学での学びにはどのような違いがありますか?

大きく二つあります。一つは、考える学びであること。これまでは教科書に書かれたことを覚える学習が中心だったと思いますが、大学では覚えたうえで、自分の頭で考える力が求められます。
もう一つは、最先端の知識に触れられること。日本や世界で研究されている最新の理論や知見に触れられることは、大学ならではの魅力だと思います。


公務員のやる気が、地域を元気に。

——田井先生の研究について教えてください。

私は、公務員のモチベーション(やる気)について研究しています。
民間企業では、組織をどう動かすかを考えるうえで、働く人のモチベーションは重要なテーマです。行政機関も同じで、やる気のある公務員ほど、仕事で高いパフォーマンスを発揮し、離職率も低いといわれています。

——では、どうすればモチベーションを高く保てるのでしょうか?

「何によってやる気がアップするか」は、もちろん人それぞれです。賃金や昇進は多くの人にとってがんばる動機になり得ます。
加えて、公務員の場合は「人の役に立ちたい」「地域をもっと良くしたい」といった、 利他的なモチベーションが重要であるといわれています。
私は、こうした公務員に特徴的な側面に焦点を当てて、社会や組織のどのような要因がそのやる気に影響を与えるのかを、自治体へのアンケート調査などを通じて分析しています。

——政治学のイメージとはちょっと違いますね。

そうですね。心理学や経営学にも通じる研究テーマですね。

——研究から、どんなことが分かったのでしょうか?

例えば、上司のリーダーシップの在り方が重要です。上司が自治体職員としてのあるべき姿を言行一致の姿勢で示し、みんなを引っ張っていくタイプだと、部下のモチベーションは高い傾向にあります。
一方で気になるデータもあります。入庁直後はやる気にあふれていても、3年ぐらい経つと、当初の思いが薄まってしまう人が少なくないようです。もちろん個人差はありますが、憂慮すべき傾向です。
そうならないためには、日々の仕事が人や社会の役に立っていると実感できる機会や、上司からの働きかけが欠かせません。私は、こうしたモチベーションを維持できるようなヒントはないか、研究を続けています。

——やる気いっぱいの公務員が増えたら、地域も元気になりそうですね。

その通りです。組織の力はやはり「人」です。「人の役に立ちたい」「地域をもっと良くしたい」、そんなやる気に満ちた公務員が増えれば、行政サービスの質も向上し、地域社会も活性化するはずです。
公務員の早期離職や採用難が社会問題となる今、やりがいを持って働くことのできる環境をどう整えていくのか。私は「人」という切り口から行政をアップデートし、その解決策を見出すことを目指しています。