経営情報学科

リスクに対する 意思決定を 心理学的に検証。

経営学部 経営情報学科 増地 あゆみ 教授

「リスク認知と意思決定に関する心理学的研究」をテーマに研究を進める増地先生。原発や地震、環境変動など、世の中でリスクとされていることに対して、私たちはどう意思決定をしているのか、心理的観点から明らかにしようとしています。その考察は、今後、新たに出現するリスクへの備えになるかもしれません。

学生生活でも役に立つ組織の中の心理学。

——経営情報学科で学ぶことの魅力を教えてください。

本学科には「会計・ファイナンス」「情報・マネジメント」「心理・人間行動」の3つのコースが展開されていて、2年次から興味に応じてコースを選べます。4年間の学びを通じて、社会人としての活躍を支える知識やスキルを幅広く身につけられるのが大きな特徴。興味・関心に応じて、会計、情報、心理に関わる資格や検定を取得できるのも魅力です。

——増地先生が担当している講義では、どんなことが学べるのですか。

私が担当しているのは「組織心理学」と「チームの心理学」です。「組織心理学」のテーマは大きく分けて3つあります。1つはモチベーション、2つ目が適性や職務遂行能力、そして3つ目がストレス。どれも組織で仕事をしていくうえで必要となる知識です。学生には知識として学ぶだけでなく、アルバイトや部活動など組織の中での活動経験に当てはめて、どう活かせるかという視点で考えてもらうようにしています。

「チームの心理学」では、チーム内でのコミュニケーションや、チームワークの高め方、求められるリーダーシップ、チーム運営について学びます。

この講義は300人ほど受講していますが、ただ私の話を聞くだけでなく実際にグループに分かれて、体験学習にも挑戦してもらいます。

——チームの運営を疑似体験するんですね。

チーム内でコミュニケーションを取って、メンバーそれぞれが持っている情報を伝え合い理解しなければ解けない課題が設定されています。

あえてリーダーは決めないのですが、自然とリーダーシップを発揮する人が出てくる場合もあれば、そうでない場合もあります。毎回、提出されるレポートでは、「次はもっと、こうしたい」とか「自分はこんな役割を果たすべきだった」など、それぞれに気づきが見られます。

授業では思い通りにいかなかった学生も、その経験をアルバイトや部活動の場で活かすことができるのではないでしょうか。

心理学的な視点でリスク認知を明らかに。

——先生の研究について教えてください。

主な研究テーマは「リスク認知と意思決定に関する心理学的研究」です。地震や原子力発電、化学物質や携帯電話の電波など、さまざまなリスク事象に対して、私たちはどのような認識を持ち、どのように意思決定をしているのか、心理学的観点から明らかにする研究をしています。

——リスクに対する意思決定とは、どんなことなのでしょう?

例えば、新型コロナのワクチンに関して、感染予防のメリットだけでなく、副作用というリスクがあります。このリスクは科学的に評価されますが、専門家によるリスク評価と、科学的な知識を持たない私たちの考えるリスク評価は違っているというのが研究の大きなテーマなんです。

——両者が大きくズレている場合はどうなるんですか?

社会として意思決定をするときに、結論が出にくかったり対立が起きたりします。そこでどんな情報があれば一般の人たちが安心でき、専門家と同じように冷静な判断ができるのかを考えなくてはなりません。一方で専門家も科学的になり過ぎるあまり一般の人の感情面を考慮していない場合もあります。そういったズレを研究で明らかにしていきたいと思っています。

——ズレを把握することが大事なんですね。

多くのリスク事象は、同時にメリットも持っています。人々のリスク認知を明らかにすることは、そのズレを把握し建設的な議論を進めるためにも重要です。現在、直面している気候変動やPFASの問題、今後、新たに出現するリスクの問題を解決するためにも、心理学的な視点でのリスク認知の研究は不可欠だと考えています。

——最後に、高校生へのメッセージをお願いします。

大学では自由に使える時間がたくさんあります。最初から自分の興味や関心を狭めずに、人との出会いを大切にして、さまざまな活動にチャレンジしてください。自分が面白いと思えることや好きなことは、将来の進むべき道を示してくれます。全力で大学生活を楽しんでください。