高校教師の経験から科学的根拠に基づいた英語指導法を研究。
——先生が研究している英語教育について教えてください。
英語を外国語として学ぶ人にとって、どのような学習法や教授法が有効なのかを研究しています。語彙の習得、読む・聞く・話す・書くの英語4技能と文法力を含めた総合的な英語運用能力の向上について、学ぶ・教えるの両面から実証的に検証することが目的です。
——研究のきっかけは、高校での英語教師経験だそうですね。
私は公立高校で英語の教師をしていました。その際に一般的な学習方法や指導法について、なぜそれが効果的なのかということに興味を持ったんです。教え方を理論立てたら、先生たちももっと自信を持って教えられるのではないかと。

高校で英語を教えていて感じたのは、まず語彙力が伸びないこと。1つの単語を覚えて日本語の意味が分かっても、長文の中では全体のメッセージがつかめない。ライティングでも論理的に書けない。そういう事例をたくさん目にしてきました。
どの高校でも英単語のテストがあると思いますが、授業の中でどんな活動をすれば単語が覚えられ、読んだり聞いたりして理解するだけでなく、書いたり話したりできるようになるのかも考える必要があると思いました。そういった指導法を研究するために、移民が多く英語を母語としない人たちへの指導に優れたオーストラリアの大学院に留学したんです。
——先生の研究から得られた効果的な学習方法に興味があります。
例えば新しい単語を覚えるための学習理論としては、思い出す活動、想起することが非常に重要です。一般的にはテスト効果と呼ばれるのですが、英単語と日本語訳が並んでいるのを見て覚えるよりも、英単語だけを見て日本語訳が何だったかを思い出す方が効果的。受験勉強に暗記シートを使うのは、理論的には合っています。ただし1時間続けて単語を勉強するのではなく、15分ずつ4日間に分けた分散学習を行う方が効果は高いということも分かっています。少し間を空けて、忘れた頃に繰り返して思い出すという活動を取り入れると、長期記憶に定着しやすいんです。
授業ではペアワークを組み込むと効果的です。1人で学習すると短時間で多くの単語を覚えられますが、長期記憶には残りにくい。ペアなら相手がどんな問題を出してくるのかが予測できないのでテスト効果が期待できます。ですから個人学習とペアワークを組み合わせるといいでしょう。
英語教師を目指す学生には特に有益な学びがある。
——先生の研究内容が担当する講義にも活かされているんですね。
私が担当する「英語音声学」は、英語の教職課程を履修する学生には必修となっています。英語の音声に聞く、話す、の両面からアプローチし、理論面から指導法までをカバーしています。受講した学生が自分の発音を向上させられるのはもちろん、教室でどう指導するかにも焦点をあてています。
ゼミでは、学生がそれぞれの興味に応じたテーマを設定していますが、英語学習者としての視点を活かした内容が多く、授業内でどんなアクティビティをして、どういった効果が得られるかといったテーマが多く見られます。

——高校生へのメッセージをお願いします。
本学科は主に英語ネイティヴスピーカーの教員が担当する豊富なEFL(English as a Foreign Language)科目群で英語の4技能をバランス良くカバーし、世界に通用する英語運用能力を身につけることができます。また言語、文学、思想、歴史など欧米の文化について幅広い専門知識を習得できるのも魅力です。
英語教師を目指す人にとっても、多様な学生がいる総合大学で学ぶ意味は大きいと思います。学生時代にいろいろな人と出会い、勉強はもちろんのこと部活やサークル活動、アルバイトなどでたくさんの経験をしてください。それから、どんな形であれ旅行をすることをおすすめします。北海道から日本のいろいろな地域や世界に出ていく機会をつくってください。また本学は留学に対する補助金なども充実していますから、そういったチャンスも活かしてほしいですね。大学生活は意外と短いもの。若い感性があるうちに、さまざまな経験をしてください。
